約束

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「次にまた同じことやったらどうする」 彼が言った。 私は、事態が飲み込めない。 次も何もない。 たった今、彼には捨てられたのだから。 「どうするんだよ」 もしかして。 もう一度のチャンスをくれている? 「早く言えよ。自分の口で」 彼のイラついた声が、大きさを増す。 ――死にます。 そう言いたい衝動を、こらえた。 それは、正しい答えじゃない。 「……いなくなる」 嗚咽混じりに、声を絞りだした。 あなたの前からいなくなります。 「いなくなる、じゃねえだろ。ちゃんと言え」 言うべき言葉を、口にしようとするたびに、次から次へと涙があふれて。 声を、出せない。 「お別れ……す、る」 やっとに、絞りだした言葉。 けれど。 「お別れするじゃねぇだろ。『縁を切る』だろ」 ああ、そうか。 彼の怒りの前では、別れすら生温いのだ。 完全なる決別の誓い。 それをしなければならない。 「今度、自分を大事にできなかったら。あなたと、縁を切ります」 涙は、止まらず。 嗚咽も、止まらず。 「今、約束したからな」 彼の念押しに、かろうじて出した声を以て、答えとした。
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