電脳世界――VW――

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 昇の不機嫌そうな声に奈々は「ありゃりゃ……」と、少しだけ残念そうに呟いた。 「大変申し訳ありません、お客様。既に使用中の名前のようですので、他の名前に変えて貰えないでしょうか?」 「と言うことです」  店員のそれに乗っかりつつ、奈々は手早く『氷室』の名前を一文字変えて『緋室』という名前にする。  今度は「ERROR」の文字は出なかった。 「いいみたいだね、どうかな?」  了承の言葉だろうと理解していた昇は無言で頷く。  店員に製作には二時間ほどかかると告げられ、その間に昇は奈々から『トリプル』に関する教授を受けた。  主に、世界観ばかりだったが。  操作方法やストーリーなどは店員に聞いても「行けば解る」ような丁寧な言い回ししかしないので、仕方がないと言えば仕方がない。  そして、昇は『トリプル』の世界へと踏み込むことになる。 「では、行きますか!」 「はいはい」  大してやる気のない昇のテンションを無視するようにして、奈々は素のテンションでゲームを推し進めていく。  昇にとって初めてのネットゲームは、決して悪くはない世界だった。
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