戦いの断片

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         μ  古代ギリシャの神話に出てくる石造りのような神々しい神殿、そこの入り口に一体のPCが背中を預けていた。 「……ここまで来るとは、ね。まぁ、予想通りと言えば、予想通り、かな?」 「ふざけたこと言ってんじゃねぇぞ、てめぇ」  対して、巨大過ぎる石階段の下からそのPCを見上げるのは、原始の狂気に染まった一体のPCだった。  その手には変幻自在の武器、《銀の雫》が握られている。 「そこを、どけ」  静かに。  しかし、寒気を感じさせるほどの殺気を込め、呟く。 「……どけないわね」  だが、それを聞いて尚も高見に在るPCはその瞳を細め、感情を殺した声で応えた。  壁から背を離し、下界の見渡せる境界線のような巨大な階段の淵まで進み出る。 「そこを、どけ」  今度は、誰が聞いても理解できる程の怒気を含んだ言葉。  だが。 「言ったはずよ。どけないわ」  頂きに立ちはだかるPCは、冷酷なまで彼の言葉を拒絶した。  狂気に染まったそのPCは、階段をゆっくりと登ってくる。  手に持つ最強の武器が彼の意識に反映されて、生き物のように蠢く。  それを見ても、頂きのPCはまだ武器を取り出さない。  どころか、構えすら取らない。  そして、彼は残り半分の階段をたった一度の跳躍で一気に登りきり、 「そこを、どきやがぁれえぇぇえぇっ!!」  百の命を消し飛ばす狂気を、薙ぎ払った。
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