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奈々の言う『トリプル』とは、数十年前から流行しているオンラインネットゲーム。
一世紀前の一時期、原因不明の脳内幻痛治療のために開発された技術を応用したゲームのことだった。
もちろん昇も知っている。
ネットゲームには有りがちの説明不足を、更に説明不足になっているゲームとしても有名で、尚且つ数十年単位で流行しているゲームでもある。
知らない人間がいるとしたら、モグリというよりはもう未開人だ。
ただし、そのゲームをするためには専用のカプセルが置かれてあるゲームセンター、或いはゲームショップに行かなければならない。
喧嘩三昧だった過去から抜け出してきた元不良なだけに、何となく昇はそういった“人間がたむろする場所”という所に通うのに抵抗があった。
しかも、『トリプル』は専用のICカードを購入してからPCを作らないといけないことや、そのPCの作成に数時間はかかるらしい。
そんな面倒なことをしてまで、昇は『トリプル』をしたいとは思っていなかった。
はずなのに。
「とうちゃーくっ!」
「……おぃ、ふざけんなよ、お前」
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