2181人が本棚に入れています
本棚に追加
―――――
夕方、宿題も全て済ませやることの無くなった綾人は、自室で本を読んでいた。
もちろん、前日に蓮と里沙に予定があると言ったのは嘘だった。
30ページ程読んだところで、携帯からメールの受信を知らせる機械的な音が静かな部屋に響いた。
受信Boxを開くと、里沙からの蓮と付き合い始めたと言う報告メールが画面に映し出される。
「はぁ…」
里沙に気持ちを伝えるように言った時から、こうなることは綾人も覚悟していた。
けれど…
「思っていたよりもキツイな。。。」
早く返信しなければと思いながらも、思うように言葉が出てこない。
しばらく携帯を握ったまま固まっていた綾人は、けれど一度大きく深呼吸をして返信を打ち始める。
お祝いなのにたった二言なんて少し冷たいかとも思ったけれど、今の彼にはこれが精一杯だった。
送信ボタンを押すと、綾人はそのままベットへ行き体を沈めた。
ボーッと天井を見上げる彼の隣で、再び携帯が鳴り響く。
「今まで通り…か」
里沙からのメールを読み、自然と文章を声に出す。
一言だけ返信すると、綾人は携帯を投げ出して腕で視界を遮るようにして目を閉じた。
里沙はもちろん、蓮さんのことも大好きだから、2人が幸せになれれば俺も嬉しい。
だから、里沙に気持ちを伝えるようにけしかけたんだ。
明日からは、2人の今まで以上に幸せそうな笑顔が見られるんだ。
だから、これで良いんだ。これで…
綾人は、自分に言い聞かせるように心の中でそう言うと、二度と開くことのないように、自分の気持ちにしっかりと蓋をした。
最初のコメントを投稿しよう!