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「綾人、お疲れ様」
挨拶を終えて綾人がステージから下りると、彼が小等部5年の時に父親から「将来のお前のボディーガードになってくれる子だ」と紹介された、高等部1年の葉山凜(はやま りん)が声をかけてきた。
凜に差し出されたオレンジジュースを受け取りながら、綾人は会場内を見回す。
「ありがとう。父さんたちは?」
「旦那様に急な電話が入ったらしくて、少し遅れるって言ってた。でも、もうすぐ来ると思うよ」
「そうか」
凜の言葉に納得して近くの壁に背をついた綾人の隣に、彼も同じように背をついた。
「…里沙さん、笹村先輩と付き合い始めたんだな」
「あぁ」
何気ない風に言った凜の言葉に、綾人は一言だけ返した。
「お前がそれで良いなら俺は何も言わないけど、後悔はするなよ」
「…ちゃんと自分で考えた結果だから大丈夫だ。俺は2人の幸せを願うって決めたんだよ」
まっすぐ前を向いたまま言った綾人に、凜は何気ない風に一言だけ返す。
「そうか」
「綾人!凜君!」
突然勢い良く自分たちの名前を呼んだ、聞き慣れた声に2人が視線を向けると、互いの家族が大人数で近付いて来ていた。
「…多いな」
改めて実感したことに思わず呟いた綾人の言葉に、凜は隣で苦笑いを浮かべる。
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