祖父の最期

9/10
前へ
/75ページ
次へ
「個室の方へ移させて頂きました」 淡々と看護師は言う。 案内された個室の中には呼吸器や管を外された祖父の姿があった。 いつもと変わらない祖父の寝顔。 声をかければ今にも起きそうな安らかな顔。 「皆様が帰られてから、すぐ呼吸が止まりました。最期に皆様の顔を見られて安心されたのでしょう。午後5時14分。御臨終です」 医師が言った。 まだ、こんなに温かいのに…。 周りが涙している中、私は実感が湧かず祖父を、しばらく見つめていた。 すると祖父の指先が、わずかだが動いたように見えた。 「あっ!今指動いたよ!まだ爺さん死んでないよ!」 私がそういうと親戚達は涙声で言った。 「アンタの気持ちは分かるけど、これが現実なんだよ」
/75ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1083人が本棚に入れています
本棚に追加