第一章:新しい懐かしさ

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 「凜!」 びっくりした。 再開した母の第一声だった。  この人が母さんか……。なんか懐かしいような……あぁ、思い出した! そうだ、母さんだ。 良かった良かったと頭を撫でながら母さんは涙を流した。懐かしい、匂いがした。 「息子さん、軽く記憶喪失を起こしているみたいですから、暫くは心理カウンセリングを受けさせてやって下さい。」 そう言って警官は簡単な地図を描いて母に渡した。  家に帰ってからはいろいろ思い出した。俺の部屋、俺の制服、俺の茶碗、俺の歯ブラシ―― 全てあの日からそのままの状態で置いてあった。 ん? あの日? そう、俺はなんで居なくなったんだ? いつ居なくなったんだ? どうしてもそれだけが思い出せない……。
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