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風が砂浜を走った
海から吹く強い風。
風が吹いたと思うとそこには黒いマントを羽織った五人の人間が立ち尽くしていた。
その中の一人はまだ生まれて間もない赤ん坊を抱いていた。
「ここら辺に置いておけばいいだろう」
「そうだな……」
くぐもった人の声が聞こえてくる。
「時間が惜しい。そろそろ行くぞ。」
赤い眼を持った声の低い男が静かに言った。
「あぁ、今行く」
赤ん坊を抱いた男が言った。そして赤ん坊を砂浜の上に優しく置いた。
「幸せになれよ……」すやすや眠っている赤ん坊に語りかけるように言った。
赤ん坊を抱いていた男が四人の方へ戻ってきた。
そして、赤い眼の男が言った。
「行くぞ」
とその途端に風が竜巻となって黒いマントの人間達を包みこんだ。
竜巻はすぐに無くなった。
そして、黒いマントを羽織った五人はもうどこにもいなかった。
いるのは赤ん坊。
ふと見ると赤ん坊の横に一枚の紙と石が置いてあった。
この赤ん坊が青年になった時、再び五人のマントの人間と再会するとは誰も知らない。
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