プロローグ

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 路地裏。  そこは色とりどりの光溢れる表通りとは裏腹に、暗い闇だけが静かにたたずんでいた。  ただずんでいるのは路地裏だけではなかった。それは白いワンピースを着た茶髪の、ポニーテールの、小柄な少女だ。  否、ワンピースは白かったというべきだろう。彼女の白いワンピースは返り血を浴びたように真っ赤だった。赤いのはワンピースだけではない。彼女の近くの地面にも小さく目立たないが赤の斑点が見える。  少女は顔をしかめ髪を弄った。そして真っ赤になったワンピースをつまみ、 「………」  二言三言呟いた。  すると不思議なことに、ワンピースから赤がブラックホールに吸い込まれるように消えていく。彼女のワンピースには、もう、どこにも赤はない。あるのは綺麗な白だけだ。  その白くなったワンピースを見て彼女は満足気に頷くと路地裏を立ち去った。
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