ー友ー

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「翔様、体に芝生が…」 そう言って、背中を払ってくれた 『ありがとう』 「いいえ」 優しく笑う和海を見て、一瞬、胸がズキンと痛む 無理矢理とはいえ、俺にも隙があったから… 「翔様?」 『………ん?』 「どうかしましたか?」 和海には、話すべきだろうか… それとも… 「腕が痛むのですか?」 『いや…違う』 「何か、あったのですか?」 『和海…』 「はい」 『いや……何でもない』 「そう…ですか」 言ってどうする 俺がぼーっとしていたら、キスをされましたって言うのか? それは、大変でしたねって、和海は答えるのか? 傷付けるだけだ わからないなら、言わない方がいい 『ごめん…少し休むよ』 「はい」 和海の顔も見ないまま、部屋に向かう 「翔……何故」 彩月との事を言ってくれると思っていた 軽くふざけて言われたら、聞き流すつもりだったのに 「翔…隠すと言う事は、相手が気になると言う事だろ?」 言って欲しかった もう、冗談では聞き流せないよ お前の心の中に、誰がいる? 俺だけ? それとも… 「和海…」 冬矢がやってきた 「冬矢…」 「どうした?翔の事か?」 「双子はこういう時に困る」 「仕方ないだろ」 「ああ…」 「お前…もし翔の気持ちが彩月に行ってしまったら…」 「彩月に任せるよ」 「お前…そんなに簡単な問題じゃないだろ」 「ああ…翔がいなくなったら、死にたいよ」 「だったらどうして」 「彩月の心の傷が治るなら…」 「じゃ、お前の傷は誰が治すんだ」 「それは……」 「あれは事故だ、和海のせいじゃない」 「だけど、彩月は…」 「和海…俺にお前の気持ちが伝わって…やりきれないよ」 「悪いな」 今の和海の心は、海の底よりも暗く、寂しい 「和海…諦めるな」 俺の声…ちゃんとつたわってるよな…
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