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俺は彩月達を見ているのが辛くなり、堪らず家を出た
今までにも、辛い事は数え切れない程味わっていたのに
しかし、その辛さは、翔が居たからこそ乗り切る事が出来た
子供の頃から、いつも見ていた
翔の全てが愛おしい
しかし、そんな翔を
俺は今、諦めようとしている
諦めるなんて、口で言う程簡単に出来るわけないのに
しかし、彩月が命を賭けて愛した人は、俺のせいで手の届かない所へ行ってしまった
生きていればいい
触れる事が出来なくても、傍に居てくれるだけで
それだけでいい
色々な思いと感情が、交互に押し寄せては消える
これから先も、押しては引いていく波のように
消える事なく、永遠に俺を苦しめるだろう
それでも耐えなければいけないんだ
彩月も耐えていたんだから、俺にだって出来るはず
「彩月…約束は果たすよ」
ベンチに座り、指輪をそっと外す
胸が押し潰されそうになり、耐え切れず涙が溢れ出す
何を見ても、一瞬で頭の中にその場面が甦る
お前は馬鹿だと言われても仕方ない
愛する人を苦しめるのもわかっている
しかし、その愛する人を慰めるのは俺ではない
全ては俺の罪
背負うべきものは永遠に続く、身を切り裂くような想い
「翔…お前との約束は、果たすことが出来ない」
このまま全てを捨てて、翔を連れて逃げてしまいたい
仲間を裏切り、親友を裏切り…逃げてしまいたい
「出来る訳がない…」
指輪をポケットにしまい、立ち上がる
神様…翔が涙を流しても、私の涙が流れないように、力を…貸して下さい
翔がどんなに悲しんでも、決して私が手を差し延べない力を…下さい
「くっ……ううっ…」
泣くのはこれが最後
だから
今だけは…
翔を思って泣かせて欲しい
「和海…いつまでも傍にいてね?」
「いつまでも、傍にいますよ」
「約束だよ」
「約束です」
さようなら、翔…
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