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意識を失い倒れそうになった翔を、胡月が受け止め、部屋に運んだ
「翔……」
胡月は辛そうな顔をして、翔を見ていた
胡月だけはわかっていた
何故、銀月が急に変わってしまったのかを
「銀月…やり過ぎだろ」
眠る翔の頭を撫でながら、呟く
しばらく様子を見て、部屋から静かに出て行った
銀月と知らない奴がいる部屋
中からは何も聞こえてこない
翔が倒れたのも銀月は知っているはず
「翔は?」
彩月が心配そうに聞いてきた
「眠っている」
「そうか…だけど何故急に?」
みんなが驚くのも無理はない
「私…もし銀月がこのままあの人と暮らしたりしたら絶対許さない」
紅蝶は涙目で言う
「俺も許さない…翔はいつも笑ってなきゃ嫌だよ」
燕羽も泣きそうな顔で言う
「紅月…お前何も知らないのか?」
冬矢が聞く
「今回の事は何も聞いていない」
誰も、胡月が知っているとは思ってもいない
「どうするんだよ」
幻月は静かに言った
「銀月を見ただろ?あれは…本気だ」
胡月が言う
「まじかよ…」
彩月も辛そうな顔をしている
(ウフフ…駄目だってば…)
(クスクス…聞こえちゃう)
「あの野郎…!」
立ち上がる紅月を胡月がとめた
「離せ!」
「今騒ぎになれば翔が起きるだろ」
「私もういや!」
「銀月は何考えてるんだよ」
「くそっ!」
紅月は拳で壁を殴り付けた
壁に赤い染みが出来る
「俺、翔についてるよ」
彩月がそう言って立ち上がる
「頼んだぞ」
紅月が言う
(アハハ…ウフ…)
(あっ…あっっ…)
堪らず紅蝶は耳を塞いだ
胡月と幻月は外に出て行った
残されたみんなも、耐え切れずリビングから出て行った
今、この家の中も人間も
完全に冷え切っていた
誰もいないリビングから見える木蓮も、月明かりを受けて寂しそうに泣いているように花びらを散らしていた
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