4055人が本棚に入れています
本棚に追加
(ウフフ…やだぁ…もう)
「もういい」
ドアの前で声を出していた男に声をかける
「だけどおかしな事言うんだね、声だけ出せだなんて」
「金は倍払う」
「別に俺も行く所がないし、しばらく住まわせてくれるんだから、金はいらないけどさ」
「お前には何もしないから、安心しろ」
「別に~、してくれてもいいのに、タイプだし」
「そっちの部屋を使え、この部屋には勝手に入るな」
「はいはい」
名前も知らない男を拾い、芝居をしてもらった
行く所がないなら調度いい
「翔……」
指輪を落とした時のお前の顔…
全てを忘れて、抱きしめてやりたかった
あんなに悲しい顔をさせたのは俺
泣かせたのも俺
傷付けたのも俺
全て俺のせい
「翔…ゆるしてくれ…」
許される訳がない
みんなの冷たい視線より
お前の一粒の涙の方が、堪えるよ…
こんなにも愛しているのに
もう、触れる事も出来ない
翔の顔を見て、涙を堪えるのが大変だった
涙を見せる事は出来ない
絶対に気付かれてはいけない
辛いよ…
本当に、身を引き裂かれる思いだよ
苦しいよ
心が握り潰されているみたいだ
「翔…翔…愛している」
愛しているよ
いつまでも
だけど、決して悟られないように…
その思いを全て閉じ込めてしまおう
決して開けないように…
こんな和海の気持ちを知っているのは風に揺れる木蓮だけ
翔……
早く…彩月を好きになれ
最初のコメントを投稿しよう!