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「幻月が呼んでる…」
『うん』
「みんなと顔を合わせたくないなら、ここに運んでこようか?」
和海と… ではなく
みんなと…と言うのは、彩月の思いやり
『大丈夫、行くよ』
「わかったよ」
少しふらつきながらベットを降りる
「大丈夫?」
彩月が支える
『大丈夫だよ…怪我はまた完治してないけど、病人じゃないから』
無理して笑う
お前は心に大きな傷を負っただろ…
と言ってしまいそうだった
「翔…」
『ん?』
「お姫様抱っこ!」
『えっ、ちょ!』
ふわっと翔を抱き上げ、部屋を出る
『やめてよ、歩けるってば!彩月!』
「やだね~」
『恥ずかしいからやめろって』
「やめないよ」
そう言いながら階段を降りる
『ちょ!危ない』
「大丈夫、俺がお前を落とすわけないだろ?信じろよ」
『だから、もういいってば!』
「はい、到着!」
「あ、おはよ」
みんなはア然と二人を見ていた
『おはよ…』
「朝から何してんだ?」
「さぁ?」
『よし、食べるか』
いつも座るテーブルには、空席がひとつ
誰も何も言わない
「翔、たくさん食べないと、またジュース飲ませるからな!」
『無理!』
「じゃ、食べろよ」
幻月は笑いながら翔を見る
「和海、おなかすいたから何か食べに行こうよ」
和海と男が降りて来た
「あれ?みなさんお食事中?」
誰も返事をしない
「何だよ、和海行こう」
「ああ」
「あっ、そうだ」
「何だ」
「和海の部屋にプラネタリウムのパンフレットがあったからさ、行こうよ、プラネタリウム」
翔の手が震える
「和海」と呼ぶのは翔と冬矢だけだった
それが特別の意味を持っていたから
それなのに
こいつは簡単に和海と呼び、和海もそれを許している
「翔…」
冬矢が翔の震える手を握る
少しだけ和んだ空気が、和海達によって、簡単に壊されてしまった
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