第壱話 始まりのチャイム

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僕の席は窓側の一番後ろ、彼女の席は通路を挟んで右隣である。   そのため質問が飛び交っているのがよく聞こえる。   しかし、彼女の声はまったく聞こえない。   まぁ、あの自己紹介からして結構おとなしい性格なんだろうな。   すると一人の男子生徒が 「ヤベッ!始業式!あと2分もねぇぞ!」 と叫ぶと、男子は皆時計を見上げて 「ホントだ!ヤベェ!急げ!」 男子生徒が皆自分の体育館履きを席から取り、一目散に走っていった。   僕はどうやら一人取り残されてしまったみたいだ。 いや、桜井さんも居た。   僕はあまり初めての人と話すのは得意ではないのに、彼女に話しかけていた。   「あ…あのー 桜井…さんだったよね?」 コクッっと彼女は頷いた。 「始業式始まるから早く行った方がいいと思うよ?」 僕が言い終わる少し前に彼女はスッっと立って教室を出て行ってしまった。   今度こそ一人である。
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