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ほんの一瞬だった。
見た瞬間飛び上がったので、普通の鳥なら見わけがつかないのだが、あの、虹を水墨画で描いたような変わった模様。
見まごうわけがない。
即座に、あの鳥だと思った。
鳥は大きな糞を落とした。
私の鼻先をかすめて、足元に落ちていた大きな葉っぱの上に、ボトンという音を立てた。
ドサッだったか、とにかく牛や馬の糞が落ちたように、大きい音がした。
しかしうまいこと葉っぱの上に落ちた。
芋の葉っぱだろうか。
その上に、やはり糞も奇妙な色や模様をしていて、白というよりは、クリームと茶色が入り混じって、今で言うとキャラメル模様のアイスクリームに似た感じだった。
だからと言って、甘そうではない。
葉っぱの上にこんもりとしている。
あんまり一部分だけ、そう、ちょうどあの蝸牛くらいの大きさぐらいがこんもりとしているので、その糞の中に消化されないまま蝸牛がいるのではないかと思った。
私は何を思ったかその糞を、葉っぱで包み。炭焼き小屋に入って、囲炉裏の横に置いた。
ちょうど竹の皮があったので、その上に置いた。
囲炉裏にはいつも鍋がかかっていて、食事を作ってもらったり、湯を沸かしたりしていた。
程なく娘が上がってきた。
娘を見ていると、憎らしいという気持ちしか起こらなかった。
大八郎の血を引いていることが憎らしい。
私より若い事が憎らしい。
そして、男の子に生まれなかったことが憎らしい。
娘は怯えているようにも見えたが、産まれてくる子をぜひ取り上げてほしいと言うと、了承して準備に入った。
食事を作り、それとは別にお湯を沸かし、布きれなどを用意して、掃除などもしてくれた。
私は、陣痛の間隔が段々、短くなっていることを娘に告げる。
食事をしている場合ではなく、鍋には味噌か醤油か忘れたけれど、調味料と野菜が入ったまま、ぐつぐつと煮込まれていたが、そのまま、横になった。
気がつけば、とっぷり日は暮れていた。
今と違い、昔の夜は闇だ。
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