受諾

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「聞いた感じ、犯行の手際は悪くないね」 煙草を手に取った。我慢の限界だった。 「吸っても?」 令子に向かって笑顔を向けた。令子が小さく頷く。煙草に火をつけてから、圭は率直な感想を口にした。 「やっぱり警備会社じゃないかな、この相談は。少なくとも私立探偵の仕事じゃない」 頼久も理緒も、納得の表情からはほど遠い。 「鬼かお前は」 「圭さん見損なった」 「俺は冷静に状況を判断して言っているだけだ」 煙草の煙を吐き出した。部屋中が重い空気に包まれている。 ゆっくりと煙草を吸い終え、まだ一本も吸い殻の入っていない灰皿に煙草を押し付けた。 「でもまあ、今日は泊まっていくといい。幸い寝室には使っていないベッドがあるし。不安なら、理緒も一緒に泊まればいいし」 とりあえず妥協案を提出した。このままでは、頼久も帰るに帰れないだろう。 ただ、やってもいいという気持ちは芽生え始めている。いくつか引っかかっていたものの正体が、なんとなくわかったからだ。 それがわかると、一番最初感じたよりも、面倒な仕事ではないと思える。寧ろ、簡単な仕事だ。 頼久も納得はしていないようだが、提案を受け入れた。  「絶対にこの仕事やれ。親友の頼みだ」 そんな捨て台詞を残して、頼久は帰った。理緒と令子と圭。三人が残される。 「圭さん、夕食どうしようか?」 理緒の明るい声が響いた。敢えて明るく振る舞っているのが、圭にはわかった。 「理緒が作ればいいんじゃないか?」 「うん。でもせっかくだし、下で食べない?」 理緒がこちらを見ながら首を傾げる。 「久しぶりに行くか」 襲われる事はないだろう。この場所もまだ知られてはいないはずだ。 「下って、カフェ?」 令子が理緒に疑問をぶつける。 「夜になると、バーになるんだ。美味しいお酒と料理。それにマスターがカッコいいんだよ」 「まだ少し早いし、しばらく理緒と寝室でゆっくりしてれば良い」 「圭さんは何をするの?」 「寝る」 この話を引き受けるとして、引っかかっていたものの正体を、今の内に整理しておきたい。 「じゃあ、寝室に行こうか。こっちだよ」 理緒の言葉を背中で聞きながら、既に思考を巡らせていた。 事件の話を思い出し、一つ一つの事実を反芻する。やはり、行き着く結論は同じだった。 頼久の顔を思い浮かべながら、煙草に火を灯した。  
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