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リビングのソファーの上で、目が覚める。窓から降り注ぐ光が眩しく、二宮圭(にのみやけい)は目を細めた。
いつもそうしているように、ぼやけた視界の中で煙草を探す。
散らかったテーブルの上に目的の物を見つけて、愛用の装飾がないジッポで火を灯した。
紫煙を吐き出す。
少しずつ、ぼやけた思考もはっきりとしてきた。
壁に掛かったアンティークの時計は午後二時を少し回った所を指している。
都合十四時間眠っていた事になる。
毎日何かやっている訳でもないのに、よく眠れるものだ。もしかしたら、眠る事に一番体力を使っているかもしれない。
喉が渇いている事に気付き、圭は立ち上がった。
煙草をくわえたまま、ふらふらとキッチンまで歩き、キッチンの入り口にある冷蔵庫のドアに手を伸ばした。
手間をかけずに飲めそうなものは、ペットボトルに入ったミネラルウォーターだけだ。
そのペットボトルを掴んで、ふらつく足取りで元居たソファーまで戻る。
短くなった煙草を、灰皿に押し付けた。
ペットボトルのキャップを開けて、ミネラルウォーターを流し込む。冷えた液体が体中に染み渡っていく。
テーブルの上にペットボトルを置き、その手で、二本目の煙草を手に取る。
最後の一本だった。
ちょうどその時、どこかで携帯電話の着信音が響いた。
座っているソファーの上の毛布をひっくり返すと、携帯電話がフローリングの上に音を立てて落ちた。
携帯電話を拾い上げ、液晶画面に目を落とす。
良く知った番号が、液晶画面には表示されていた。通話ボタンを押す。
「圭だ。……。ああ、今起きた所だ」
話しながら、ソファーに寝転んだ。寝室は別にあるが、いつもこのソファーで眠っている。
「……。まだ来ていないようだ。こっちに来るなら、どこかで煙草と食い物を買って来てくれ。……。買って来なかったら事務所に入れないぞ」
電話の向こうの声が仕方ないように承諾する。電話が切れた。
圭は携帯電話をソファーの上に放り出すと、再びテーブルの上のペットボトルを手に取り、水分を補給した。
ソファーに寝転がり、体に毛布を巻きつける。
ぼやけていた意識は、目を閉じるとすぐに遠のいていった。
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