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「そーゆー問題じゃないでしょう」
「そうかな」
「そうよ」
圭が首を捻りながら、煙草を携帯灰皿の中に入れた。
「それよりメモは見つかったのか?」
「これだと思う」
先ほど見つけたメモを圭に渡す。圭はメモを開いて、しばらくそれを読んでいた。
その間に、圭がひっくり返した引き出しの中身を片付けた。
「何かわかった?」
「だいたいね」
「ふーん。そーゆー事だけは、得意なんだから」
だけ、という部分を強調する。
「帰るか」
それを気にしたような素振りもなく、圭がリビングの外に歩いていく。
「ちょっと、バッグ持ってよ」
「ああ、ごめん」
置いておいたバッグを圭に渡した。
「なんでこんなに重いんだよ」
バッグを担ぎながら、圭が呟く。
「女の子には、いろいろ必要なものが多いの」
「そんなもんか」
「そーゆーもんよ」
電灯のスイッチを切って、圭の後からリビングの外に出る。
「お邪魔しました」
そう声を響かせて、玄関を出た。
「だから誰に言ってるんだよ」
「いちいちうるさいんだから。器の小さい男は嫌われるわよ」
門を出て、停めてあったバイクの方に向かう。
エンジンをかけて、ヘルメットを被ってから、バイクに乗った。圭もバッグを重そうに担ぎながら、後ろに乗る。
「もうこんな時間」
腕時計に目を落とすと、六時を差していた。
「早く帰って晩御飯ね」
「何作るんだ?」
「そうね……、ペスカトーレかな」
「この間も食ったな」
「作って貰ってるのに文句を言わない。さ、飛ばすわよ」
「ちょっと待て、心の準備が……」
圭が言い終わる前に、バイクを急発進させた。二号線に出て、今度は東へとバイクを走らせる。
二十分ほどで、事務所に帰ってきた。店から令子が出て来る。
「ただいまー」
「メモ、見つかった?」
「うん。お母さんの部屋にあったよ」
「そっか」
「今からちゃちゃっと晩御飯作っちゃうから、食べようよ」
ヘルメットを脱いだ。まだ圭が後ろに乗っている。
「早く降りてよ」
「ちょっと待て。視界が揺れてる」
「情けないんだから」
「理緒の運転が荒いんだよ」
圭が何かを呟きながらバイクを降りた。理緒もバイクから降りる。
「バイク持って帰らないのか?」
「置いてていいでしょ。しばらく家には帰らないだろうし」
他愛ない会話を交わしながら、二階へと急な階段を上がる。
部屋に入ってすぐに、理緒は料理の支度を始めた。
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