394人が本棚に入れています
本棚に追加
「目開けていいよ…フフ…」
仁美さんの甘く優しい声に私はゆっくりと目を開けました。
何も変わった様子もなく、いいえ…頭の上に何か乗っているようなそんな気がしました。
「きれいよ…弘実ちゃん…」
「きれい…?何がですか?」
「フフ…」
仁美さんが洗面台を指差しました。私は言われるがまま立ち上がり洗面台の鏡の前に立ちました。
「鏡見てごらん…」
鏡を見てみると…そこには見知らぬ女性が立っていたのでした。
「だっ、誰ですか?」
鏡に向かって話しかけるという愚行に気づいたのは、仁美さんのこの一言でした。
「弘実ちゃん…どう?きれいになれたでしょ?」
鏡の中に映っていたのは、私が知っている冴えない志田弘実ではなく、夜の蝶のように華やかな弘実ちゃんだったのです。
最初のコメントを投稿しよう!