季節はずれの転校生

1/2
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

季節はずれの転校生

'07年12月募集作品。  時々、パソコンが羨ましくなる。なぜなら、一度覚えたことは、よほどのことがない限り、変わったり消えたりしないからだ。  時間というものの仕打ちを受けたのは、文化祭を控えた十月上旬。その日は、なぜだか教室が朝から騒がしかった。が、ちょっと耳を傾けただけでその理由が知れた。 「九月の頭に転校してくるなら分かるけどね」  友人らが寄ってくるが、その情報を知ってから五分と経っていないし、何よりあまり興味自体湧かない。くだらない推測に終始した。  チャイムが鳴り、担任が渦中の人物を勇者のお供よろしく連れて入って来ると、瞬時に着席、途端に大人しくなった。いつもこうなら優秀クラスとして表彰されるな。  で、だ。その生徒は、女の子。個人的な評価でいえば可もなく不可もなく。美少女というほどではないが悪い容姿でもない。外見だけでは、好意を抱くには至らなかった。 「はっ、はじめまして。みじゅ……ん、水樹優<みずきゆう>です。よろしくお願いしますっ」  とぺこり。苦笑。  はてさて。彼女の席は例の如く一番後ろ窓側。先生に促され。教室の真ん中を突っ切る。すると一旦、俺のすぐ近くで足を止め、思わず見つめ合ってしまった。気のせいか、いわゆるデジャヴを感じた。今までにこんな娘、会ったことあっただろうか。 「あの……早峰陽<はやみねよう>さん、ですか?」  唐突にそんなことを言い、教室がざわつく。 「ああ、そうだけど?」  彼女、水樹優は軽く笑んだだけで自分の席へとすたすた行ってしまった。恐ろしいことをしてくれる。  一時間目までの時間、問いつめる野郎どもを無視し、彼女に近づこうとしたが、女子の壁に阻まれてしまった。かろうじて、 「水樹さん、同い年なんだからタメ口でいいって」 「いえ、私は皆さんより一歳年下なんです」 「どしてどして?」 「アメリカにいたので……」 「じゃあ、飛び級? 頭良いんだ!」  という会話だけが聞き取れた。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!