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季節はずれの転校生
'07年12月募集作品。
時々、パソコンが羨ましくなる。なぜなら、一度覚えたことは、よほどのことがない限り、変わったり消えたりしないからだ。
時間というものの仕打ちを受けたのは、文化祭を控えた十月上旬。その日は、なぜだか教室が朝から騒がしかった。が、ちょっと耳を傾けただけでその理由が知れた。
「九月の頭に転校してくるなら分かるけどね」
友人らが寄ってくるが、その情報を知ってから五分と経っていないし、何よりあまり興味自体湧かない。くだらない推測に終始した。
チャイムが鳴り、担任が渦中の人物を勇者のお供よろしく連れて入って来ると、瞬時に着席、途端に大人しくなった。いつもこうなら優秀クラスとして表彰されるな。
で、だ。その生徒は、女の子。個人的な評価でいえば可もなく不可もなく。美少女というほどではないが悪い容姿でもない。外見だけでは、好意を抱くには至らなかった。
「はっ、はじめまして。みじゅ……ん、水樹優<みずきゆう>です。よろしくお願いしますっ」
とぺこり。苦笑。
はてさて。彼女の席は例の如く一番後ろ窓側。先生に促され。教室の真ん中を突っ切る。すると一旦、俺のすぐ近くで足を止め、思わず見つめ合ってしまった。気のせいか、いわゆるデジャヴを感じた。今までにこんな娘、会ったことあっただろうか。
「あの……早峰陽<はやみねよう>さん、ですか?」
唐突にそんなことを言い、教室がざわつく。
「ああ、そうだけど?」
彼女、水樹優は軽く笑んだだけで自分の席へとすたすた行ってしまった。恐ろしいことをしてくれる。
一時間目までの時間、問いつめる野郎どもを無視し、彼女に近づこうとしたが、女子の壁に阻まれてしまった。かろうじて、
「水樹さん、同い年なんだからタメ口でいいって」
「いえ、私は皆さんより一歳年下なんです」
「どしてどして?」
「アメリカにいたので……」
「じゃあ、飛び級? 頭良いんだ!」
という会話だけが聞き取れた。
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