~~回想~~10年前

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快晴。 心地よい陽気と、爽やかな風に吹かれる。 試合場の中央には二つの人影。 キヌアは左腰に差してある鞘から、右手で剣を一気に引き抜くと、相手に対峙した。 「加減は無用。本気で参る」 真剣な眼差しで相手からは目を逸らさない。左足をゆっくり、しかし確実に一歩前に出し、右手にしっかりと握った剣の切っ先を相手の喉に向け、そのまま腕を顔の横へと持ち上げる。左手は刄に添え、腰を落として軽く前かがみに。 「……いい構えだ、キヌア。ナンバー21、ガラン、全力でお相手する」 ……不覚にも息が詰まった。あの構え、雰囲気、眼光。どれ一つとして格下のそれではない事を全身が告げていた。 (まさか新米訓練生に気圧されるとは……) ガランは昨年のランキング戦21位。56名いる隊員の中で、その実力は中堅。堅実で真面目な性格のこの男。 後輩に対しては特に熱心で、その指導力には一目を置かれていた。 訓練生の教官として活躍する、ガードの鏡のような男が……キヌアを相手に本領を発揮する。
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