序章~ダラス山

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走る。 心地よい風を全身に受けて。 徐々に鮮明に聞こえてくるのは、気合いの乗った掛け声と、それに合わせるように、木と木がぶつかる音。 「いや~みんなやってるなぁ」 フェイトは朝早くから修行に励む仲間達に賛辞を送る。 「よし、ここは一つ俺が稽古をつけてやろう!」 そう言ってフェイトはさらに走る速度をあげる。 一見サボってばかりのこの落ちこぼれ風なフェイトは、何よりも争い事が嫌いだ。 誰も傷つかない世界。 これが彼の夢。 その夢が為に、今まで彼は仲間に打たれてきた。 打ち込んでくる全てを捌けなかったから。 無論、人を傷つけたくないから、こちらが相手に打ち込むことはない。 そんなフェイトは、皆から好かれていた。 ふざけているようでいて、とても優しいのだ、と。 誰かが泣いてはそっと傍に寄り添い、誰かが怪我をしてはすぐに手当てした。 もちろん、フェイトもみんなの事が大好きだからだ。
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