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「…待って!」
背後からの声に振り向くと、かれが居た。
「…どうしたの、」
「どうって…、」
「なんて顔してるの、」
「だって…あんた、俺の代わりに…」
「それが?」
「…俺が、行かなきゃ…いけなかったのに…」
目を伏せる。
…仔犬みたいな子だな、そう思う。
「行きたくなかったんでしょう?」
「…そう…だけど…」
「なら、いいでしょう?」
「…よく、ないよ…だって…」
「先方にはもう伝えてあります」
「だけど、」
「…夏芽、」
「…っ名前…、」
この人に名前を呼ばれるなど初めてだ。
「私が行けば、それでいいんです」
「鈴蘭…さん、」
自分の為に、あの、どうしたって嫌なヤツのところへ行くというのか。
「あなたは止めた方がいい」
「……………」
「せずに済むのなら、しない方がいい」
「でも…あんたは…」
「…私はいいんですよ」
「鈴蘭…っ、」
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