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「だから、ワシは認めんと何回も言っているんじゃ!」
初老の男性が目くじらをたてて手を机に叩きつけた。
しかし、目の前の若い女性は怯みもせずに老人を見据え続けている。
女性のお腹はかなり膨らんでいて、妊娠しているのは傍目からみてもすぐにわかった。
二人がいる部屋には豪華な中世風の装飾が施されている。
老人の身分の高さがよく表れていた。
しかし今の老人はそんなことなど感じさせないぐらいほどの怒りに満ちている。
まさに気炎を吐く勢いだ。
「勝手にふらついて、子供まで……!
あの男の素性はわかっているだろう!?
敵国から亡命してきたスパイじゃぞ!」
「全て……彼の全てを受け入れています。だから、どうか結婚を認めては頂けませんか?お父様」
女性の凛とした声にはすがるような響きは無く、むしろ反抗的だった。
それが原因かは分からないが、遂に老人は怒りを通り越して呆れたような表情になった。
「ならん。マリア、お前を軟禁する。せめてもの情けでアトロスには警告だけとしよう。子供も産むがいい。しかし、ワシから離れて結婚など認めん」
「……お父様……」
「許せ。全て、ワシの監督不届きが原因じゃ」
「私は諦めません!」
突然女性は吹っ切れたように叫んだ。
目には強い意思を宿し、手は無意識にお腹を擦っている。
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