プロローグ

2/2
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
 サンタクロースをいつまで信じていたかなんてことはたわいもない世間話にもならないくらいのどうでもいいような話だけど、それでもあたしがいつまでサンタなどという想像上の赤服不法侵入者を信じていたかと言うとこれは確信を持って言えるけど最初から信じてなんていなかった。  幼稚園のクリスマスイベントに現れたサンタは偽サンタだって理解していたし、記憶をたどると周りにいた園児たちもあれが本物だとは思っていないような目つきでサンタのコスプレをした園長先生を眺めていたように思う。  そんなこんなで母さんがサンタにキスしているところを目撃したわけでもないのにクリスマスに便乗して純粋な子供が居る家に侵入する変質者の存在を疑っていた賢しいあたしだったりするけど、宇宙人や未来人や幽霊……は怖いから信じたくなかったかな。他にも妖怪や超能力や魔法少女が悪の組織とかと戦うアニメ的特撮的漫画的ヒロインたちがこの世に存在しないのだということに気付いたのは相当後になってからだった。  いや、本当は気付いてたのかな。ただ気付きたくなかっただけなんだ。あたしは心の底から宇宙人や未来人や妖怪や超能力や魔法少女が目の前にふらりと出てきてくれることを望んでいたんだ。  あたしが朝目覚めて夜眠るまでのこのフツーな世界に比べて、アニメ的特撮的漫画的物語の中に描かれる世界の、なんと魅力的なことだろう。  あたしもこんな世界に生まれたかった! 変な犬だか猫だか分からない生き物に出会って魔法少女として戦ったり、レーザー銃片手に歴史の改変を計る未来人を知恵と勇気で撃退したり、敵の悪幹部と禁断の愛を繰り広げたり、秘密組織の超能力者とサイキックバトルを繰り広げたり、つまりそんなことがしたかった!  いや待ちなさい冷静になろう、仮に宇宙人や(以下略)が襲撃してきたとしてもあたし自身には何の特殊能力もなく太刀打ちできるはずがない。ってことであたしは考えた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!