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月の光が差し込む一室に、ある一人の男が腰に刀を差しながら眠っている。
部屋の中は静かで、彼の寝息すら聞こえない。彼は本当に寝ているのか。
否、本当に寝ている。
そんな中、部屋の中に数人の男が音を立てずに侵入して来た。
男達は皆、小太刀を構えている。これから彼を襲うつもりなのだろう。
しかし、彼は全く反応を示さない。
男達の一人が、銀色に煌めく閃光を今にも振り降ろさんとする。
その時だ。
今まで眠っていたと思われる男が、突然口を開いた。
「おやおや、伊賀忍軍の人達が、私に何か御用ですか?」
とても落ち着いた、品のある声だった。
「気付いておったか。知れた事。貴様が幕府より盗み出した妖刀『紅瓢丸』を渡してもらおうか」
忍軍、つまり忍者の集団。その中でも最強と言われた伊賀忍軍。
まさに忍者の精鋭と呼ぶに相応しい者が目の前にいるというのに、男はかなり冷静だ。
「大人しく渡せば、命だけは取らん」
すると男は小さく笑い出した。現状を把握しているのだろうか。
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