夜のレッスンルーム

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午後7時15分。 この人のレッスン終了の時間が来た。 「今日はここまでにしましょう」 レッスンは1人あたり45分と決まっている。 そのため、この人のように集中しているとあっという間に終わる。 1人に割り当てられた時間は短いが、次が控えているので遅延は避けたい。 「もうそんな時間か……また来るよ」 時が過ぎるのも忘れていた男性は、少し寂しそうに教室を後にした。 それと入れ替わりに入ってきたのは、薄汚れた作業着をつけた30代くらいの男だった。 「やあ」 「……今晩は」 私は精一杯の笑顔をつくり、泥だか油だかで汚れた手でドアを閉めようとするその男を、まるでホテルマンのように遮って、なるべくどこにも触れさせないよう部屋に招き入れた。
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