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「それじゃ恵美ちゃん、トイレ借りるよ」
「ええ、どうぞ」
男はありがとうとだけ返事をすると、大急ぎでトイレに入っていった。
男がトイレを占領している間に、私は給湯室へと向かう。
備え付けの棚からカップとインスタントコーヒーを取り出し、それを目分量でカップに入れる。
それにポットでお湯を注ぎ、甘いのが好きな自分用のカップにミルクとスティックシュガーを入れる。
それといくつかの教材をピアノ横のテーブルに持ってきた時、トイレから男が出てくるのだった。
「お待たせ、ちゃんと手は洗ったよ」
先ほどまで泥だか油だかで汚れていた男の手は、鍵盤に触れても汚れがつかなそうな清潔なものに生まれ変わっている。
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