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佳奈ちゃんを送り出した私は、自分に割り当てられた教室を外から眺めてみた。
古びた歓楽街のど真ん中にある、雑居ビルの2階を間借りしてつくられた教室。
少し離れた本通りにある本社から切り離された、私だけの部屋。
みすぼらしいが、私にはお似合いかもしれないその教室は、燃えるような夕陽に照らされ赤くたぎっていた。
私より才能も努力も積み重ねた同期生のほとんどが、今は音楽と関係のない仕事に就いている。
それを思えば、こうしてピアノで食べていられることに、どれだけ感謝しても足りないくらいだ。
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