48人が本棚に入れています
本棚に追加
「ルベル王国ですが……やはり、神器を使った痕跡が残っています。
生存者の話や一夜にして一国の軍隊を壊滅させた事から言って確かでしょう」
イリスは何やら書類を見ながら、報告を始める。
ルベル王国とはナグル帝国の同盟国。
半年前、隣国に攻められ壊滅状態だったが一夜にして逆転した。しかし、国王が死亡したため実質亡国となり、ナグル帝国が領地を吸収した。
レスターは腕を組み、瞳を閉じて報告を聞いている。ゼストもミーシャとじゃれあう事を止め、話に参加する。
「……が、神器は…見当たらない。軍も探索したそうだが…発見には至っていない…」
ゼストは本棚にもたれたままレスターの方を向いて話す。
「可能性としては、他の適合者が持って行ったか、新たな適合者を発見したかなどが考えられます」
イリスは書類から目を離し、レスターの方を見る。レスターは瞳を開くと難しい表情を見せる。
「…後者は可能性としては低いな。そう簡単に適合者が見つかるとは考えにくいし…。となると、前者か……」
レスターはそう言ってはいるが、自分でも納得がいってないようだ。眉間にシワがよっている。
「……ルベルに…適合者がそんなにいるとは…考えにくい…」
ゼストがレスターの疑問を代弁するかのように話す。
「…あぁ。あそこは領土的にも小国だ。それに、神器を使えるのは二人……ウェルナーと国王だけだからな。両方とも戦死したと……」
「……レスター…」
「あっ……すまん」
レスターはゼストに言葉を遮られた後、何かに気づきイリスに申し訳なさそうに謝る。
「いいんです……神器が無いと言うことは、ウェルはまだ生きてるかも知れないということですから。……私は彼を信じます」
イリスはそうは言っているが、言葉に力が無い。ウェルナー…もとい恋人の死を悲しんでいるのは確かだった。
最初のコメントを投稿しよう!