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「ま、まどかを探さないと」
果菜は焦る気持ちを落ち着かせようと、胸をに手を置き何度も深呼吸した。
――ニャアオ。
すると、どこかから鳴き声が。
「えっ、猫?」
声はすれども姿は見えない。
――ニャアオ。
人が落ちてきたビルと、ひとつ手前のビルの間に細い路地があり、そこから黒い尻尾がゆらゆらと揺れているのが見えた。
自分以外に色を持ち動く者を発見し、果菜は少しだけ安心した。
(尻尾だけ?)
尻尾の主を確かめようと路地に近づくと、それは吸い込まれるように路地の奥へと消えてしまう。
小走りに駆け寄ると路地の奥からは光が差し込んでいて、猫の形をした影が果菜に向かってすうっと伸びていた。
(もうあんなとこに?)
猫は相変わらず尻尾を揺らして果菜を呼ぶように鳴き声をあげる。
――ニャアオ。
『……な』
――ニャアオン。
『……ぁな』
よくよく聞くと、鳴き声と一緒に人の声も聞こえる。
「……まどか? まどかいるの?」
すると今度は猫は鳴かずに、声だけが返ってきた。
『かなぁ!』
果菜は反射的に走り出していた、と同時に猫も走り出し光の奥へ。
(間違いない! 今の、まどかだ!)
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