■序■

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  ふいに何かが頬に触れ、空を見上げた。 「え? 雨?」 森下果菜は肩にかけた籠バッグをガサガサと漁る。 「やっぱ無いかぁ」 朝、まだ眠ったままの頭で聞いたニュースも、目をこすりながら見た携帯の天気予報も一日中晴れると告げていたのに……何故か訪れた突然の雨。 (私って、雨女?) 今は小降りだが頭上の雲は次第に色を変え、本降りになるのも時間の問題。折りたたみ傘を忘れた果菜は、慌てて駆け出した。 ……のだが、雨は勢いを増し不本意な足止めを食らってしまう。   (まどか、もう着いてるかな? 私また寝坊しちゃったし) 近くの店の軒先で雨宿りしながら再びバッグを漁りだし、ある事に気付いた。 「嘘っ! 嘘だぁ」 待ち合わせの相手である佐伯まどかに連絡しようとしたのだが、傘どころか携帯電話まで忘れてしまったのだ。 低血圧で寝起きの悪い果菜。 遅れないように頑張って早起きしてみたのは良いが、本当に目が覚めるまでに時間がかかり、結局家を出たのはギリギリ。 慌てていて、持ち物を確認する余裕など無かった。 「携帯忘れるなんてありえない……何やってんだろ」  
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