■猫を追って■

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  果菜は自分の目を疑った。今のショックで自分の目が色を失ってしまったんじゃないか、とも思った。 しかし、そうではないと気付く。 果菜の周りに存在するすべて……空、建物、道、集まった人々、死体がコンクリートで固めたように灰色に変わってしまっても、果菜自身は色を失っていなかったからだ。 (血が……) 足元に飛んだ血は何故か綺麗さっぱり消えていた。 おそるおそる死体に目をやると、灰色に固まったそれは最後に見た時と形を変えている。 「えっ?」 ――潰れていない。 正確には地面にぶつかる直前で止まっている。 まだ人の形を保っていようが色が無かろうが、気味の良い物では無い。果菜は見ないようにして死体の向こう側に回った。 「……まどか?」 死体を挟んで向かい合う位置に、居るはずのまどかがいない。 きょろきょろと辺りを見回すが、灰色の群集の中にも見当たらなかった。 「まどか! どこっ? まどかぁーっ!」 風も無く、どんよりとした空気の中、果菜の声が空しく響く。 (何が起きてるの? まどかはどこ行っちゃったの……?) 雑貨屋に行こうとして走り出したら、二人の間に人が落ちてきた。 自分はそこに倒れて夢を見ているのではないかと思いたいが期待は外れ、つねった腕がチリリと痛む。  
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