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朝方に近い深夜。仕事を終えた怜史は真っ直ぐ自分の部屋に戻った。埃を落とす程度に軽くシャワーを浴び、バスタオルを首にかけて頭を無造作に拭きながらバスルームを出る。腹は減っていたが今から何か食べようという気力はなかった。元々生活感のあまりない冷蔵庫からビールを取り出し、一気に呷る。
空になった缶をテーブルの上、何日前に置いたか最早忘れてしまったが、同じように飲み干して放置してあった空き 缶の隣に並べて、どさりとベッドに転がった。
『少し寒くてまだ起きてた』
先刻の榛名のメールを思い出す。
――榛名さん、何してた? 俺が側に居なかったから眠れなかった? 俺を想って……一人でエロい事してたりしねーかな。あのエロい身体を、夜独りぼっちにしてしまって、……何もなかったとは思えない。
「やっぱ遠慮しないで思い切って榛名さんち行けば良かったかな……」
あー……、と小さく唸り、目を閉じて寝返りをうつ。
気が付くと、怜史は榛名の部屋の前に来ていた。チャイムでは近所にも響いてしまうかと思い、小さくノックする。
「はい……?」
中から不審そうな榛名の声が聞こえた。
「俺。怜史」
その声を聞いて、中からドアが開く。潤んだ紫色の瞳が怜史を見つめた。
「怜史……」
「榛名さん……どしたの? なんか、ほっぺた赤いよ」
上気してほんのり染まった榛名の頬を親指でなぞるように撫でると、榛名はぴく、と肩を震わせた。
「な……にも……」
誤魔化すように笑って、頬に置かれた怜史の手を振り払おうと榛名が弱々しく手を上げる。怜史はその両手首を取って、榛名を壁に押さえ付けた。
「こんな顔して……何もしてないワケないっしょ?」
鼻先数ミリの距離で脅すように囁いて、噛み付くように唇を塞ぐ。
「ん、ん……ンん……」
榛名の身体から力が抜けるのを見計らって、取った手首を開放してやる。すると榛名自ら怜史の首に腕を回し、怜史との密着を求めてきた。永遠とも思えるくらいの長時間榛名の唇を貪ってそっとその唇から離れると、離れるのを惜しむように二人の唇の間に透明な糸が伝った。
「も……、怜史……」
榛名が官能で目尻を赤く染めて、訴えるように怜史を見つめる。
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