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先生に怒鳴られて、ようやく和輝は静かになった。
教室ではプリントなどが配られている。
前の席からどんどん回ってくるプリントを後ろに渡していると、後ろのドアが開いて生徒の保護者が教室に入ってきた。
「智也の親父っさんは来てんの?」
後ろから和輝が話しかけてくる。
「……来るわけないよ」
「だよな」
俺の家の事情を知っている和輝は苦笑いを浮かべている。
「そういう和輝の家の人も来ないの?」
「ん~両方とも仕事だよん」
「そっか」
和輝の家は両親とも働いている。
父親は警察のキャリア組かなんかでの仕事一筋。
母親もバリバリのキャリアウーマンで仕事熱心らしい。
ふと横を見ると、さっきの女の子が後ろに向かって小さく手を振っている。
(この子の親か~どんなんかな)
少し興味を惹かれて、女の子の視線を辿った先にいた人を見て、……俺の体が無意識に固まった。
体に電撃が走ったかのような衝撃を覚えていた。
そこにいたのは、これまで忘れるはずもない人が、笑顔で手を振っていた。
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