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「お~~~~い!」
俺は思考を止め、顔を上げた。俺の前10メートル程先で友人が手を振りながら近づいてくる。
――全くやっとか。
俺は心の中で溜息を吐き出した。
手にした時計の長針はもう9、短針ももう少しで2を指す。
これは後で飯奢り確定だな。
俺はそんな事を思いながら、友人に向けて歩き出した。
「ったく遅いぞ~~! 時計見てみ、一体何分遅刻してると……」
――ドン
と身体に衝撃。二、三歩きだした俺は同じ年位の男と正面ぶつかってしまった。
「あ、すみません」
軽く謝って先へ行こうとしたが、男はどかない。
――は?
一瞬の違和感、突然身体に走る激痛。
――あれ?
男の息が荒い。
男がゆっくりと俺から離れる。
その手は真っ赤に血塗られていた。
友人が蒼白な顔で俺を見る。
――理解が、出来ない。
周りの人達も皆俺を見ている。
――認めたくない、信じたくない
騒がしい筈の駅前広場が、まるで時が止まったみたいに静かに感じた。
――嫌な汗が噴き出す。
そして目だけを動かし、一通り周りを見た俺はゆっくりと、現実を。
自
分
の
身
体
を
見
た。
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