死の瞬間に何を思う

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 俺の腹には、大振りなナイフが根本まで深々と刺さっていた。男が俺の腹からナイフを乱暴に引き抜く。血が、まるで泉みたいに勢いよく出た。 「は? 何だよ……これ……」  俺は腹を押さえた。そんな事は無駄だと本当は知りながら。  気味の悪いニチャッというガムを噛んだ様な音にぶよぶよとした感触。  腹から血と一緒に何かがボトボトと零れてきた。  ――ああ、そうか  俺の臓腑か。 「あ」  情けない声が出た。俺はヨロヨロと一歩、二歩と後ろに下がる。  男と目があった。  血走った瞳、ゾッとする程の不気味な光を帯びた瞳。 「あ……じょ……冗談だろ……?」  男が大きくナイフを振りかぶる。その動きは決して早くは無い。だが、既に正常な判断が出来ない俺は、動けない。 ――ドチュ  肉が裂ける。首がパックリと裂かれた。  真っ赤な血が吹き出す。  俺は助けを求めようと叫んだ。  が。 ヒュウ ヒュウ  でも俺の口からは言葉は発せられなかった。  ただ、首の切られた箇所から空気が漏れる音。そして口からゴポゴポと血の泡を吐いただけ。 「通り魔だ!」  誰かが、叫んだ。  視界が空へと移る。  違う、これは俺が仰向けに倒れたんだ。  ビチャっと自分の血の海に倒れる。服が血に染まる。  何とか身体を起こそうとするが力が入らない。上半身を少し起こすので精一杯。  俺の友人が背中から刺された。  知らない女の人が恐怖で動けず、男に首を刺された。  俺  死ぬのか?  息が出来ない。  俺の身体の中から失われる。  血だけじゃない。  もっと決定的な何かが。 『命が流れていく』
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