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三人は、町から伸びる街道を歩く。
アーシア
「やっぱり、偶には町から出て羽を伸ばさなきゃやってらんないわね」
背伸びをしながら言う。
リフィル
「町の自然とは違った何かがあるのよね。こう、もっと優しい感じの何かが」
アーシア
「ああ、なんかそれ分かるかも。何かが違うのよね、同じ土地なのにさ」
ジャン
「なあ、んな事よりも二人は信じてんのかよ。“黒い丘”の伝説」
アーシア
「勿論よ!! 信じているから調査に行くの!! 根本的なところから分かってないわねぇ。いい、私たちは黒い丘に伝わる伝説の第一実証者になるのよ。その為のアーシア調査隊なんだからね!!」
リフィル
「ごめんなさい……私、実は信じてないんだ。その伝説……」
少し遠慮がちに
アーシア
「はぁ!?」
ジャン
「そんなことだろうと思った。リフィルが、あんなおとぎ話信じるわけないもんな」
リフィル
「だって、そんなモノ信じられると思う?」
アーシア
「違うわよリフィル。私たちの、その信じる気概が大切なのよ。『偉大な発見は、須(すべから)く伝説を信仰する者によって成される一つの奇跡なのである』ってね」
ジャン
「ハア……んで、それは誰のコトバ?」
アーシア
「私のコトバよ」
得意気に言う
リフィル
「…………」
微かに溜め息
ジャン
「…………」
微かに溜め息
アーシア
「なんなの? どうしちゃったわけ、このしらけ具合!!」
ジャン
「自分の胸に聞いてみな」
アーシア
「……お前はよくやった。これからも期待してる……だって」
リフィル
「…………とにかく、私は吸血鬼なんてモノが存在するなんて全然信じてないの。今日私が付いて来たのは、二人を危険な目に遭わせないようにするためなのよ」
アーシア
「別に、リフィルにお守りされなくたって私は大丈夫よ。ジャン、アナタが感謝しなさい」
ジャン
「は!? いやいや違うだろ!! アーシア、絶対にお前だって」
アーシア
「いーえ!! それは絶対に違います。アナタです」
ジャン
「それだから男にモテねぇんだぞ!! 素直になれ」
アーシア
「なんですってぇ!! アンタも同じでしょ!!」
リフィル
「二人共です!!!!」
アーシア
「…………ハイ」
ジャン
「…………ハイ」
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