歩く少女は夜闇に抱かれ

7/19
前へ
/42ページ
次へ
ハーメルスの町 レグラント邸中庭   エルダ  「旦那様…」 少し動揺した感じに   オリヴァー  「ん? どうしたんだねエルダ」   エルダ  「あの、お客様です…何もお申し付けされておりませんでしたので、エントランスにお待たせしているのですが…」   オリヴァー  「客……? 誰からも便りは無かったがな。今行く。エルダ、済まないが応接間に紅茶を持ってきてくれるかな?」   エルダ  「はい、旦那様。かしこまりました」           レグラント邸 応接間   エメリッヒ  「私とは、初めましてかな。レグラント候」   オリヴァー  「君は……だ」 誰だ、と尋ねようと。   エメリッヒ  「エンドール公国府直轄特務公安総局所属。エメリッヒ=ノア・エランベルク。と言えば分かって貰えるかな?」   オリヴァー  「エランベルク……だと……」   エメリッヒ  「ご存知ですね? いや、存じているなんて生半可なものでは無い筈だ」   オリヴァー  「貴様等が……今更私に何の用だ……」 声を低くして。   エメリッヒ  「おや、まるでもう我々とは無関係みたいな物言いだが、公安は決してレグラントを見逃した訳ではないのだと云う事を、しっかりと覚えておいた方が良い」   オリヴァー  「また私達から奪うつもりか!! 息子二人だけでは足りず、次は何を奪う!?」激昂。   エメリッヒ  「それは、これからの貴方の態度に因らしむる所が大きい。貴方が公安に力添をしてくれると云うのであれば、我々は貴方がたに何ら手を加えるつもりはない」   オリヴァー  「く…………」   エメリッヒ  「なに、案ずることは無い。直ぐに終わる。貴方が苦痛に感じるような助力を要請する事は無いだろうからね」   オリヴァー  「…………」   エメリッヒ  「この無言は、協力してくれるのだと理解して良いのかな?」   オリヴァー  「私たちに、危害を加えるような真似はしないのだな?」   エメリッヒ  「ええ。私に協力してくれるのなら」   オリヴァー  「…分かった。協力しよう…」   エメリッヒ  「協力に感謝致します。さて、我々が探しているものなのですが…」   オリヴァー  「何を探している? 用を済ませて、さっさと出て行ってくれ」   エメリッヒ  「ヴァンパイア」   オリヴァー  「何だと……」   エメリッヒ  「我々の探し者、ですよ」
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

34人が本棚に入れています
本棚に追加