歩く少女は夜闇に抱かれ

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  ジャン  「ん? おい、リフィル」   リフィル  「なに? クッキーなら、まだ――」   ジャン  「違う違う。クッキーなんかじゃなくて、その、リフィルが朝から付けてたロザリオ、外したのか?」   リフィル  「え? 何言ってるの、外してなんか……ん……あれ…………」   アーシア  「あれ、リフィル、ロザリオなんかしてたっけ?」   リフィル  「ええ、今朝誕生日プレゼントって伯父様方から頂いたの……さっきまでは確かに有ったのだけれど……」   ジャン  「ほら、ポケットの中とかには無いのか?」   リフィル  「ううん……無い……何処にも無いわ……」   ジャン  「ということは」   アーシア  「森の中に」   リフィル  「……落とした!!」           ロザリオを落とした地点       吸血鬼がロザリオを見つける。   カノン  「おや? ロザリオ、ですね。それも、永い来歴を持った。こんな所に人間の装飾品が落ちているだなんて、珍しい事も有るものですね」           三人の秘密基地   リフィル  「一体、どこに落としたっていうの……」   ジャン  「最後に確認したのは、いつ頃なんだ?」   リフィル  「ええと、アーシアが私達に手伝えって叫んだ辺りから、だと思う……」   アーシア  「ってことは、そんなに前の話じゃないって事よね?」   リフィル  「ええ……」   ジャン  「つまり、落とした可能性が有るのは捜索地点から、ここへ戻って来るまでの道ってことになる」   アーシア  「道って言っても、獣道じゃない。ロザリオみたいに小さな物なら、どうなることやら」   リフィル  「よし……」   アーシア  「ん? リフィル、何か言った?」   リフィル  「私、探しに行ってくる」   ジャン  「おい、リフィル。正気か!! この森の中で、あんな小さな物を――」   リフィル  「あれは、あのロザリオは私の大切なモノなの。だから、無くす訳にはいかない」 決心を込め、力強く。   ジャン  「よし、分かった。俺も手伝うぜ」   アーシア  「あれ、この空気……抜け駆けは許されない感じよね……」   ジャン  「勿論。隊長は常に、隊員への配慮が大切だろ」   アーシア  「そ、そんなこと、百も千も万も承知よ!! アーシア捜索隊はこれより、リフィル隊員のロザリオ捜索を開始するわよ」
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