歩く少女は夜闇に抱かれ

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  カノン  「おやおや、我が屋敷、久方振りの客人は花も羨むような生娘ですか。ふふ、長生きも、してみるものですねぇ」 屋敷の灯りが一斉に灯る。   リフィル  「な……なに……!?」   カノン  「貴女が探し求めているのは、このロザリオなのでしょう?」   リフィル  「あなたは誰……? どこに居るの……?」 辺りをしきりに見回しながら。   カノン  「ここですよ。お嬢さん」   リフィル  「え…………?」   「ニャアン」   リフィル  「いい加減にしなさい!! あなたはどこに居るの!?」   カノン  「目の前に居るじゃないですか」   リフィル  「へ……?」   黒猫の姿が変形し、どんどん人の形に変化していく。   リフィル  「え……なに……どういうこと……?」   カノン  「詰まり、こう云う事ですよ。お嬢さん」         森の中…   ジャン  「アーシア、そっちには!?」   アーシア  「駄目、どこにも居ない……どうするの……?」   ジャン  「俺たちだけじゃ無理だ。街に戻ってレイル兄に知らせよう」   アーシア  「リフィルをここに残したまま、街に戻るっていうの?」   ジャン  「完全に日が暮れちまってるんだ。早くしないと、捜索すら不可能になるぞ。だから、まずは街に戻ってこの事を知らせねぇと」   アーシア  「……うん……分かったわよ……だったら、早く戻りましょう」   ジャン  「ああ、急ぐぞ」   ジャンとアーシアはハーメルスまで戻る。       屋敷     リフィル  「…あなた……もしかして……」   カノン  「もしかして、何です? まあ、恐らくは今貴女が思い浮かべているソレですけれど、ね」   リフィル  「……吸…血鬼……なの……?」   カノン  「ええ。まさしく私は、貴女達人間が云うところの“吸血鬼”と云う存在です」 じりじりとリフィルに近づく。   リフィル  「いや…来ないで…」   カノン  「大丈夫ですよ。何もしません。ただ、手を出して頂けますか?」   リフィル  「嫌……」   カノン  「大丈夫ですから」   リフィル  「う……」 恐る恐る手を前に出す。   カノン  「これは、貴女の大切なモノでしたね。勝手に拾ってしまってすみませんでした。お返し致します」 リフィルの手に、静かにロザリオを置く。
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