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リフィル
「……え?」
カノンの予想外の行動に戸惑う。
カノン
「おや? 何を驚いてるんですか? まさか、私みたいな吸血鬼は人間に敬意を払っていないとでもお思いでしたか?」
リフィル
「……ええ、なんとなく」
少し緊張がほぐれる。
カノン
「それは些か心外ですねぇ。一応、私達吸血鬼は、人間の新鮮な血液が大の好物なものでして。ならば、それを提供してくれる人間には、最低限の礼儀は弁えるべきでしょう?」
リフィル
「わ、私には分からないけど、礼儀を知らないよりは余程良いと思うわ…」
カノン
「ありがとうございます。それにしても、貴女は順応が早いですね」
リフィル
「どういう意味…?」
カノン
「ですから、貴女はもう、私を見て恐ろしいとは思われないのですか?」
リフィル
「まあ……今も少し怖いけれど…一応、あなたはロザリオを返してくれたから …」
カノン
「フフ…ククク…面白いお嬢さんですね」
リフィル
「な、なによ…どうして笑うのよ」
カノン
「いえいえ、理由が余りに明快なものでしたから、つい」
リフィル
「明快で悪かったわね…」
カノン
「貴女――貴女は、私に襲われると云う事は思われなかったのですか?」
リフィル
「え……? まあ、最初は直ぐに殺されるんだと思ったわ。でも、さっき言った通りあなたはロザリオを返してくれたし、それに謝ってくれた。だから私は、今はあまり怖くはないの」
カノン
「……不思議なお嬢さんですね。いえ、不思議な人間、ですね」
リフィル
「そう? あなたも同じ位不思議なんじゃない?」
カノン
「私が? 何故そう思われるのですか?」
リフィル
「だって、人間の血が大好物なら、直ぐに襲うはずでしょう? でも、あなたはそうしなかった。だから不思議だって事」
カノン
「ああ、それは当たり前ですよ。人間を見たら直ぐに襲うと云う輩は、それは低俗な半血鬼(ハーフブラッド)共ですから」
リフィル
「ってことは、あなたはその……ハーフ…ブラッドではないって事?」
カノン
「ええ。それはもう。私は吸血鬼の中でも取り分け誇り高い純血鬼であり、名誉有るグランシルドの長。カノン=フォン・ウェーラージュ・グランシルドなのですからね」
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