歩く少女は夜闇に抱かれ

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  リフィル  「純血鬼…?」   カノン  「ええ。吸血鬼以外の何者の血も流れない至高の吸血鬼です」   リフィル  「つまり、あなた……カノンって呼んでも良いかしら?」   カノン  「む、人間にその名で呼ばれた事は有りませんね。でも、まあ良しとしましょう」   リフィル  「ありがとう。じゃあ話の続きだけど、カノンはその……ハーフブラッド、だっけ? そいつらとは違うって訳ね」   カノン  「フフフ、愚問中の愚問ですね。良いですか? ハーフブラッドと云うのは吸血鬼以外の穢れた血が流れる低俗な畜生の事です。彼等は自身の吸血欲の赴くままに徘徊し、一度獲物が視界に入ろうものなら、品性など微塵も感じられない無様な吸血の姿を晒します。吸血の頻度も高く、時には死体の血液すら……ああ、説明するだけで虫酸が走りますね。ああだけは成りたくないものです」   リフィル  「じゅあ、カノンのような純血鬼は何が違うの?」   カノン  「全てですよ。具体的に列挙すれとなれば、まず、我々純血鬼は自身で完全に理性を制御することが出来ます。人間以上にね。そして新鮮な人間の血液しか口にしない。いえ、正確に言うのならば、新鮮な人間の血液以外口に出来ない、ですね。鳥や犬猫の類の血など、泥水のようなものです。繊細なんですよ。我々純血鬼は」   リフィル  「変身は、カノンだけ? 私のロザリオを拾った時には、カノンは黒猫の姿だったじゃない」   カノン  「ああ。あれは、純血鬼の中でも古い来歴を持つ者にしか使えない力なんですよ」   リフィル  「へぇ…………あっ!!」   カノン  「どうなされたので?」   リフィル  「今何時!?」   カノン  「さあ、私には分かり兼ねます。私に時間と云う概念など皆無ですから。それはそうと」   リフィル  「何? 私、早く帰らないと…」   カノン  「貴女の血を、頂きたいのですが」   リフィル  「え……!?」   カノン  「何も心配することは有りませんよ。味見をするだけですから」 リフィルに近付き、抱き寄せる。   リフィル  「い…いやぁ……」   カノン  「私はもう、我慢の限界なんですよ」 リフィルの首筋に舌を這わせる。   リフィル  「い…いや……ん……あ……」   カノン  「今は全てを忘れて下さい。この世界の事は」       ………… ………………    
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