リフィル・クローディア

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 「……っ!!」    リフィル=クローディアは途端に覚醒した。  バッ、と上体だけをベッドから起き上がらせる。    「ハァ……ハァ……」    過呼吸。動悸が異常に早い。自分の心臓の鼓動が聞こえてくるようだ。    「また……あの夢……」    リフィルは溜め息を吐きながら、自分の額に手を当てる。そこには、うっすらと脂汗が浮かんでいた。    「もう、ずっと昔の事なのに……」    未だに、窓から射し入る陽光は薄くぼやけていて、一見しただけでは今が朝であるのか、それとも薄暮の時分であるのか分からない光量である。しかし、この穏やかな春の空気。部屋に満ちた静謐で清々しい新鮮な空気は、今が確かに朝なのだと、リフィルにそう理解させるには十分に足り得るものだった。    「……さて!! 切替切替。元気を出しなさいリフィル!!」    今まで放心の域に身を置いていたリフィルは、そう言って自分の両頬をパシンと両手で勢い良く弾くと、静かにベッドから足を下ろした。そして、自分の正面に有る純白の漆喰で塗られた壁に飾られた十字架に手を結ぶと、    「今日も良い一日で有りますように」    リフィル=クローディアは、静かに祈りを捧げたのだった。  
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