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「おはようございますエルダさん」
「おはようございます。リフィルお嬢様」
リフィルが着替えを済ませて一階のエントランスに降りると、そこには屋敷の使用人の一人であるエルダの姿が有った。リフィルに挨拶をされると、彼女はダイニングカートに掛けていた両手を体の前で組み、優しい笑顔でリフィルに軽く一礼した。
「エルダさん、今日もお疲れ様。いつもありがとう」
「いえ、滅相も御座いません。私は、リフィルお嬢様のお世話を生き甲斐にしておりますから」
エルダはそう言って、一度カートの方を向くと何かを思い出したようにリフィルに再び顔を向けて、
「それより、今日は良い紅茶葉が入ったんでございますよ」
「へぇ、どこの紅茶なの?」
ダイニングカートの上に載せられた白磁のティーポットの注ぎ口からは、うっすらと立ち上る湯気と一緒に豊満な茶葉の香りが漂って来る。それも、コゼーを被せているにも関わらず。
「私めも詳しい事は存じ上げてはおりませんが、どうやら遠い東の国で摘まれた茶葉のようですよ。確か名前は……シャン・グリラ……とか言いましたっけ……?」
エルダが首を小さく傾けながら言った。
「シャン……グリラ……桃源郷……って意味よね? 素敵な名前の茶葉ね」
「ええ、お味も期待していて下さいましね。飛び切り美味しく淹れますから」
「はい」
リフィルは満面の笑みを浮かべながら返事をした。
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