僕と彼女と彼女の彼

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彼女の話はこうだった。 「唯ちゃん家のシロが5匹も子犬を産んだの。もらい手がなくて困ってるから気に入ったら1匹連れてって、って唯ちゃんが言ってくれてね?見に行ったら、すっごく可愛いくて。一目惚れして、何も考えずにその場でもらって来ちゃったの。それがシュー」 シュー。 「秀」でも「修」でも「シュウ」ですらなくて、カタカナで「シュー」だそうだ。 「『シュウ』ってウをつけるんじゃなくて、『シュー』、伸ばし棒なの。字面も可愛いでしょ」 僕のこの3ヶ月の苦悩は何だったんだ、と言いたくなるようなことを、彼女は至極さらりと言う。 どこかやっぱり無神経な気もする。 「要するに、この3ヶ月ずーっとヤキモキしてた僕は……ただのバカ?」 「え?」 「……何でもない」 何かがぷしゅー、と勢い良く抜けていくような、そんな感覚。 「雑種なんだけど、クリーム色でふかふかで、すっごく可愛いの!中里くんも、会う?」 当たって砕けろ。 ふいに手塚さんの言ったことを思い出した。 幸い砕けはしなかったものの、自分が空気の抜けた風船になった気がした。
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