僕と彼女と彼女の彼

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彼女のおしゃべりに「シュウ」が山ほど盛り込まれるようになったのは、先月の終わりごろから。 「修」だか「秀」だか知らないけど、とにかくすごい愛されっぷりだ。 そもそも僕と彼女とでは学科が違うから、話すチャンスはそれほど多くはないはずなんだけど、それでもお昼時に学食に行ったりすると彼女がいて。 「シュウがね……」 と楽しそうな話し声が耳に入ってくる。 それだけならまだいい。 「早紀~!」 僕たちのサークル――バスケの同好会には、板倉さんという世にも恐ろしいマネージャーがいる。 美人だが、部員の誰もに――部長にさえも――『ウチの真の権力者は板倉だ』と認められるマネージャー。 そんな板倉さんと仲の良いのが、彼女であったりする(ちなみに『早紀』は板倉さんの下の名前、らしい)。 「あら。また遊びに来たの?」 「ふふふ。遊びじゃないでーす。お手伝いでーす」 そう。 『お手伝い』と称して彼女はしばしば僕たちの活動場所――つまりは体育館――を訪れる。 練習風景を眺めたり、マネージャーの仕事を手伝いながら板倉さんとお喋りしたり。 おかげで僕は彼女と話すことも出来る替わりに、彼女の惚気話も嫌というほど耳にする毎日だ。 「聞いてよ早紀。シュウったらね……」 彼女たちの話し声は途切れ途切れで、しかし僕を滅入らせるような単語ばかりを選んで聞こえてくる。 「もう、ホントに一目惚れだったの~」 にこにこ、満面の笑みでシュウとの出会いについて語っているらしい彼女。 僕にとってはヘビー級の威力を持った幸せオーラを、惜しみもせずに大放出。
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