僕と彼女と彼女の彼

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「そりゃ、勝ち目ないな」 「……ですよねー」 「うん、ゼロだ」 「……手塚さん。お願いだからもうちょっとソフトな表現でお願いします」 バイト先の先輩である手塚さんは、親身になって相談に乗ってくれるし、男気あふれるいい人だと思う。 時々たくまし過ぎて容赦無い、というのが玉にキズなんだけど。 「あ?ソフト?わけ分かんねぇ事言ってんじゃねぇよ。どう考えたってその状況じゃ可愛い子ちゃん落とすのは無理だろうが」 「あぅ……無理、ですかね」 倒れた人の頭を小突き回すような残酷なことを、平気で口にする手塚さん。 歯に衣着せずハッキリ言ってくれるのはありがたいが、何だか余計に傷が深くなった気もする。 「まぁ、お前にもうちょっと度胸があればな。寝取るぐらいわけないと思うが……どうなんだよ」 「ね、寝取るって……」 何つーことを。 だいたい手塚さんの表現は「落とす」だとか「寝取る」だとか、なんだか彼に不信感が芽生えてしまいそうで恐ろしい。 「うじうじ言うな。男だったらその軟弱野郎から奪い取ってみろや」
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